同居人。
 それ以前に会社の同期。
 それ以上でもそれ以下でもなかった相手。
 一緒に住んではいるが互いの生活については把握しきれていない程度の、近くも遠くもない存在。
 そいつが今、自分の中に入ってきてる。ひとつに繋がってる。
「や──やっぱヤベェ……!」
「何がだ、ちょっと力抜け山田」
「企画書、もういらね……ッ、あ!」
 押し入られて仰け反る山田の首筋を唇で辿り、佐藤が笑う。
「残念ながらクーリングオフ適用外なんだよ」
「悪徳商法かっ」
「せめて金融商品と言ってくれよ。心配しなくても仕事はちゃんとやってやるって。お前が作ったとは誰も思わねぇようなすげぇ企画書の作成な」
「いや待てお前、それじゃ困んだよ! 俺が普段作ってるよーな斬新な発想とウィットに富んだ内容で、適度に誤字脱字のスパイスを交えつつだな」
「そんな高度なスキルは持ってねぇ。てか、もう入ってんのに往生際悪すぎじゃねぇ?」
 佐藤が言って、逃げかける山田の腰を無造作に引き戻す。その勢いで中の異物がグッと奥まで侵入して山田が身体を竦めた。
「ッ!! ──ま、待っ」
「待たねぇよ」
「クソが逆流してくる!」
「誰がクソだ」
「似たよーなモンじゃねぇかっ」
「お前な、クソがこんなことするか?」
 ゆっくり引いていったクソが、今度は同じくらいゆっくり中に戻ってくる。
 途端にノドを反らして深く息を吐く山田の表情を眺め、佐藤が口を開いた。
「なぁ山田──ここに誰か入れたことあんのか?」
「んン、ッ……はぁ?」
「何でもねぇよ」
 佐藤は呟き、深く山田を犯した。
 焦れったいほど緩やかに。山田の反応を確かめながら、徐々に緩急を調整して。そうするうち、次第に山田の目がブレて喘ぎに艶が交じりはじめた。
 Tシャツが捲れて剥き出しになった脇腹に佐藤の手のひらが這う。
「ぁ──はっ、余計なトコまで触るんじゃ、ねぇっ……」
「お前、女みてぇな肌してんな」
「佐藤てめ、聞いてんのかよっ?」
「聞いてっけど、俺の勝手だろ?」
 山田に刺したモノをギリギリまで抜き、再び腹の底まで挿入しながら、佐藤が耳元まで身体を屈めてくる。
 企画書ひとつでお前を買ったんだからな──山田の粘膜が痙攣して侵入者を締めつけたのは、その囁きのせいなのか。それとも、体勢が変わったせいであらぬ場所を刺激されたからなのか。
「──!!」
 脳天まで一直線に突き抜けた衝撃で全身が激しく強張った。咄嗟に食いしばった歯の隙間から、絞り出すような呻きが漏れた。
「ちょ、締め過ぎだろ山田」
「バッ……カ野郎、お前のせいだっ」
 喚く山田のノド仏に佐藤の溜息が触れる。
「俺じゃねぇよな、まったく──すぐイキそうでヤベェっつーの」
「上等だ、はやくいけ! さっさと」
 終われ! と言いかけた瞬間さっきと同じ場所を抉られて、山田は声を詰まらせ腰を跳ね上げた。
「やっぱ好きなんだな、ここ」
 山田の顎の下で佐藤が低く笑う。
「ちが──ちょっと待、ッあ!」
 またやられて山田が背中を反らし、足が無意識に藻掻いてシーツを乱した。
「遊んで……ねぇでっ、さっさといけよ!」
「けどお前ん中、すげぇ気持ちいいからもったいねぇしなぁ」
「はぁ!?」
「そういや最初に言ったよな、お前も気持ちよくさせてやるって?」
「憶えてねぇし、いらねぇ、早く終わって寝かせろっ」
「遠慮すんなよ」
 言うが早いか再三突かれて、なすすべもなく身体が跳ねる。
「佐藤! いい加減にっ」
 でも最後まで言うことは許されない。あとはもう、ひたすら同じ箇所を責められて何がなんだかわからなくなった。
 しかも途中からランダムに深く貫かれるようになり、予測不能な刺激がますます山田を狂わせる。
「さと──やめ、もうっ……!」
「ッ……すっげ」
 佐藤が息を吐いて感嘆し、遠慮もクソもない振る舞いで山田の尻アナを穿ちはじめる。息つく間もなく引かれ、押し込まれて、山田はなすがままに揺すられながら両手で同居人の項に縋った。
「ん、あっ、さと……そんな奥──!」
 開かされた脚の真ん中で、震えてそそり立つ山田のモノ。ソイツを無造作に掴んだ佐藤の手のひらがぬるりと滑った。
「お前、超濡れてんじゃん」
「ぃ、いっ……あ、触、んっ」
「そんなにいいのか、後ろ」
「お前も試してぇ、のかよっ!?」
「別に」
「入れねぇ、からなっ──お前のっ、ケツなんか!」
「頼んでねぇよ」
 手の中のモノを擦りながら佐藤が奥を突き上げる。
 山田は内腿を戦慄かせながら縋る両手に力を込める。
「は、あっ……も、とにかく早く、イけっ──て!」
「わかったわかった、じゃあちょっと離せよ」
 佐藤は首に絡む腕を外して身体を起こし、山田の膝を深く折ると前置きもなしに最終段階へと突入した。
「あ……!!」
 悲鳴を上げかけた山田が慌てて手で口を塞いだ。それでも、ひと突きごとに指の間から声が零れ出る。繰り返し突き抜ける衝撃で脳天に穴でも開きそうだ。
 もう──何でもいいから、早く……!
 我を忘れそうな興奮に大きく喘いだ山田の腰を、佐藤の指がひときわ強く締めつけた。
 次の瞬間、低い呻きとともに一切の動きが止まったかと思うと、佐藤が山田の肩に額を落として深く息を吐き出した。
「信じらんねぇ……超、良かった」
「──」
「外にやりに行くより絶対、こっちのが正解だった」
「──褒めてんのかよ、それ……?」
「褒めてんじゃねぇか。ここまで気持ちいい女、そうそういねぇよ」
「オンナじゃねぇっつの、てか終わったんなら抜けよ!」
「けどお前、イッてなくねぇ?」
 佐藤が言って、勃起したままの山田に手を滑らせた。
「ほっとけ! いいから帰れよ部屋っ」
「遠慮すんなって」
 軽い笑いとともに、ソイツを包み込んだ手のひらがゾロリと扱き上げる。
「安心しろ、責任持ってきっちりイかせてやっから。な?」
 
 
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