2007年のXmas企画より。
【1】は、別のシリーズ(現サイトでは除外)のキャラ視点による佐藤と山田。
灰皿の設置場所に向かおうとした矢先、通りかかった2人連れの片方とぶつかりそうになって立ち止まった。
「あ、スイマセーン」
ヨソ見をしていたらしいその男が、間の抜けた声で謝る。
自分と同年代くらいの彼らはそのまま通り過ぎて信号で立ち止まると、全くこちらの耳を気にする風もないボリュームでやり取りを始めた。
「なぁ今の、超イイ男じゃねぇ?」
「お前の好みか、あれが」
「はぁ? 何言ってんの? 俺に男の好みなんかあってたまるかよ」
「あ、そう。あんのかと思ってた」
どうにも微妙な会話で、つい聞き耳を立ててしまう。
周りの信号待ちの人々も、さりげなく耳を傾けてる気配があった。
「てかさぁ、会社に持ってったらコジマをどうにかしてやれそうじゃん?」
「持ってくなよお前、通りすがりのどっかの男を。つーか、どうにかするってどうなるってんだよ、それで」
「女子の人気を奪い返す」
「自分の力で取り戻せ。ていうか元からねぇモンは奪い返せねぇし、どっちにしろお前のモンにはならねぇ」
平凡ではあるけれど女はそこそこ普通にできそうな男に向かって、女を取っ替え引っ替えしてそうなツレが気のない口調で応じる。
「ンなことより、早く行かねぇと生半額タイムが終わっちまうぜ」
「あー、アイツらにばっかイイ目見せちゃいけねぇな! 青にィ……変われっ」
平凡な方が呑気な声で指を突きつけて魔法をかけた途端、ちょうど信号が青に変わった。
周囲では、ついに吹き出したヤツが何人かいた。
【NEXT】